どんぐり商店

くだらないはなし

鰤を釣って、鯛を好きになる⑦

田口トモロヲで再生してください。

  青物・・それは釣り人のロマン。
  ここではブリこそがその頂点に輝く。
  餌は、アジに限る。
  生きたアジに針をつけ泳がせるのだ。
  この餌を選択した時点で、他の魚は釣れなくなるであろう。
  それでも、釣り人はブリを狙う。 
  なぜなら、そこにはロマンがあるからだ・・。

 

あ、すいません。
私にはロマンはありません。
たくさん色々釣りたいです。
イワシの切り身を餌に、サツキマス爆釣を楽しんでおります。

で、6匹目のサツキマス

私ももう慣れたもので、
オジサマに「wait!」と言われることもなく
針にかけたのにバラしてしまうということもなく
その引きを楽しめるまでになっていた。

しかし、このサツキマスはなかなかあがってこない。
リールを巻いても巻いても、
魚の力の方が強く、糸がどんどん出ていってしまう。

「ちょっとドラグがおかしいんじゃないの?見せて」
とオジサマがやってきた。
ドラグとは、魚が逃げる力が強い時に
糸が出ていくようになっている装置のこと。

えぇ?さっきまでおかしくなかったけどなぁ?
と思いながらオジサマに竿を渡す。

オジサマが少しリールを巻いたところで顔色が変わった。

「こりゃ青物だぞ!」

へ?

「みんな、竿を上げて!!!」

同じ釣堀にいた人たちが一斉に水中から仕掛けを引き上げる。

どどどどどーいうこと?!
何が起こっているの?!

全員で釣堀の中を見つめる。
魚の姿はまだ見えないが、釣堀中をすごい勢いで泳ぎまわっている。
他の人の竿を上げてもらった理由が分かった。
これは他の人の仕掛けに絡まってしまう。

オジサマは全身で竿を支えながら、
糸が緩む隙を見計らってリールを巻いている。
少しずつ、少しずつ巻きとっていく。
少しずつ、少しずつ魚との距離は縮まっているはずだ・・。

が、
突然ものすごい勢いで糸が出ていく。
「あぁぁ・・」見守る全員からため息が漏れる。
巻きとった以上の糸が出ていってしまった。

またやり直し。
少しずつ、少しずつ糸を巻き取る・・

徐々に魚の影が見えるようになった。

黒く光る背中
みっちりと締まった体
力強い尾の動き
美しい流線形

それにしても、なんか妙に大きくないか?


ブリだーーーーーっ!!!!!


ロマンは要らないなんて嘘ーっ!
前言撤回ーっ!
ブリ食べたいーっ!

いまや完全に観客と化した私ですが
食べる気まんまんでブリを見つめる・・
オジサマお願い・・逃がさないでよ・・。
全くの他力本願。

最後の最後まで抵抗し続けたブリですが
タモの届く距離まで引きよせられた。
そしてオジサマの友達が、タモをブリの頭に引っ掛け
(大きすぎて頭しかタモに入らなかった。)
筏の上へ投げ出した。

間近でみるととんでもなく大きい。
はかってもらったら、11.4kg!体長は80cm!!

うわー。すごいもの釣っちゃったよ。
いや、私は針をかけただけか。

釣りあげた魚はビクという生かし網に入れておくのだが、
ブリを頭から入れたら、どうにも向きが変えれなくなり
犬神家みたいになってしまった。

いやー、
ブリ狙いでいまだボウズの人もいるのになんだか申し訳ない。
ビギナーズラックという言葉では括れない
とんでもないミラクルが起きてしまった。


しかし・・・・・
このブリ、どうやって捌こう?
まな板に乗るシロモノじゃないよ・・


(もう少し続きます)