どんぐり商店

くだらないはなし

悪の味

ほくほくで、優しく甘くて、しっかりお腹にたまって満たされる。焼き芋って幸せの象徴みたいな食べ物だ。芋栗南瓜は女性の好物として挙げられたりもするんだけど、多分に漏れず私も大好き。今風(もう古いかもしれんが)に言うなら芋栗南瓜しか勝たん。正義だと思うわー。

さっき焼いたばかりの芋を食べながら考える。
芋栗南瓜が正義だとすると、その反対、悪って何だろう。カリカリに乾燥して、辛いもの。・・・カラムーチョ? いやいや、カラムーチョもだいぶ美味しいのよ。こちらもまた正義に違いない。

この2、3年で少年漫画を読むようになり、正義や悪について考えることが多くなった。それまで私は少年漫画は全て「正義 vs 純粋悪の戦い」だと思い込んで敬遠してきた。どっこい、読んでみると悪には悪の道理があり、なんなら正義の反対側にもうひとつの正義があったりして面白い。漫画のなかでは異なる理想たちは相容れずぶつかり、たいていの場合は主人公じゃない方が破れていく。主人公じゃない側を対立構造上「悪」と呼ぶのであれば、(変な日本語ですが)悪が正しいほど闘いは心理的に盛り上がり、物語はぐんと面白くなる。悪の味が決め手なのだ。

なんて正義と悪に思いを馳せていたら、あっという間に1つ目の焼き芋を食べ終えてしまった。いいわね、芋は。対立構造がなくても、悪の味がなくても、正義として存在してる。
2つ目の芋に手を伸ばす。少し細めの芋を一口かじった。
うぐっ・・・何か苦いし、土くさい匂いがする。食べかけの断面を見るとちょっと黒みがかっていた。いわゆる灰汁(アク)ってやつでは・・・。これがまさしくアクの味。

完璧な芋はない。完全な正義などない。
正義もアクを含んで存在しているのだ、と芋に諭された気がします。