木のしゃもじ
テレビに映し出される光景に言葉を失った。
自然の暴力的な大きさに怯え
そこにいる人たちを思い胸がつぶれた。
日本中が痛みを感じていたと思う。
打ちのめされ、やるせなくて、悲しくて。
地震が起きてから、私がはじめて笑った話。
涙が出るほど笑った。そして血が通い始めるのを感じた。
これは私の友達の話。
彼女は保健の先生をやっている、一見しっかり者。
数年前のこと、福井県の沖でタンカーが座礁した。
美しい福井の海は、流出した黒い重油で汚れてしまった。
彼女はそのニュースに心を痛め、ボランティアに行くことを決めた。
すると職場の人に
「そのボランティアには『木のしゃもじ』が必需らしい」
と言われた。
木のしゃもじ???
不思議に思いながらも、必要ならと荷物の中にしゃもじを入れた。
そして福井の砂浜に到着した保健の先生が目にしたのは、看板。
「 木 の し ゃ も じ は い り ま せ ん 」
え・・・・・?
どういうこと??
なんと、
木のしゃもじ、デマだったーーーーー!!!!!
どこからどういう話になったのか分からないけど
看板が出るということは、
相当な人数が木のしゃもじを持ってきたということですよね。
心優しい人たちが手に手に木のしゃもじを持って
全国から福井に集結するのを想像したら、、
ボランティア本部の人たちが、
木のしゃもじ群に困惑するのを想像したら、、
砂浜に立てた「木のしゃもじはいりません」という
一見意味不明の看板を想像したら、、
そして「私は木のしゃもじなんて持ってませんよー」
っと澄ました顔でボランティア作業する保健の先生を想像したら、、
もう、可笑しくて可笑しくて。
息ができないくらい笑った。
そして体が軽くなるのを感じたのです。
心を一旦からっぽにすること。
声を出して笑うこと。
一日も早く、一人でも多くの人に
笑いが戻ってきますように。