どんぐり商店

くだらないはなし

Oui, Oui!

笑い声って、いいよね。
楽しいって気持ちが体の外に飛び出して、空気を明るく震わす。
その空気を吸った人にも楽しい気持ちが染みていく。

チャットやLINEにもその楽しい空気をまとわせたい。
きっとみんなそうやって「(笑)」とか「ワラ」とか、笑い声を文字に託したのだろう。
そのなかでも「w」って特に便利だと思う。
英字だから日本語の文の中でも際立つ。
笑い声の大きさは文字数で伝えられる。

しかしどうも私はこれがうまく使いこなせなかった。

グループLINEでみんなが笑ってる。
私もみんなと一緒に笑いたい。
いそげ、いそげ。wを2個、そして送信。

「we」

ウィー!?

やだ。打ち間違えちゃった。恥ずかしい。
みんなが「www」「ww」って笑い合ってるなか、ひとりで「ウィー」って言っちゃったよ。笑い声が独特すぎる。

この打ち間違いを何度もやらかし、そのたび赤面して、私は「w」を封印した。
笑う時はちょっと古くさいかもだけど「笑」ってしている。

「笑」がすっかり定着して、友人とLINEをしてるときのこと。
相手がちょっとした誤字をした。
「ドライバーといし行ってたの?」
話の流れから察するに、「ドライバーとして」と言いたかったんだと思う。
私は茶化すつもりで「うん、ドライバーと石と行ってた」と返信を書いた。
そして、やーい!誤字ってる!ププー!って気持ちの表現として、珍しく「ww」を付け加えた。
ふふ。誤字ったことを恥じて身もだえろ!

友人から返事がきた
「うわ、はずかしウィー」
そして煽ってる笑い顔のスタンプ。

え?
自分の送った文を見返した。
「ドライバーと石と行ってたwe」になっていた。
行ってたウィー・・・・

揚げ足とったつもりで、とり返されてる。
恥ずかしいのはこっちだwe!

それにしても何か変だ。私の打ち間違いだけじゃない気がする。
キーボードを出して「w」と入力する。
確実に入力ボックスには「w」と表示されている。
で、送信。

「we」

え?文字が変わっている。
再びキーボード表示、「ww」、送信。

「we」

やっぱり勝手に変わっている…
じゃあ3文字は? 「www」、送信、…

「www」

なんで?
変換されなかった。


「どうした?気でも狂ったか」
友人からの返信だ。
LINEの画面は、ウィーウィー言ったあと急に笑い出す私が表示されていた。

よく見てみると、私のキーボードは予測変換の一覧にある「we」が自動選択されている。選んでないのに!


どうやら私のお節介キーボードは、wが1文字と2文字のときにだけ要らぬ気を利かせるようです。

wが1文字の時
キーボード「次の文字が分からないの?『we』だよ。直しておくね。」

wが2文字の時
キーボード「2文字目まちがえてるわよ?『we』でしょ。直しておくね、感謝しな。」

で、wが3文字の時
キーボード「知ってる、知ってる。『ワールド・ワイド・ウェブ』でしょ。情報処理の試験に出るから覚えときなよ?」

なんなの、お節介キーボードめ。wwwを知ってるからって、そんなドヤ顔しないでよ。
私はキーボード設定を開き、予測変換をオフにした。
これでもうお節介は発動しないはず。

ところが予測変換ないのは不便すぎて、一日もたたないうちに設定を元に戻す羽目になった。キーボードが高笑うのが聞こえた気がする。

もう私の笑い声はウィーでいっか。
ウィーーー。