どんぐり商店

くだらないはなし

どうき

動機 は、ささいなことだった。

ただ理由を知りたかった。

 

鬼滅の刃

 

なんでなの、

なんでそんな人気なの。

いち漫画が社会現象ってなに。

 

どうせ、主人公の成長ストーリー、

最後は鬼を倒してめでたしめでたし。

勧善懲悪でしょ?水戸黄門なんでしょ?

 

斜に構えてた。

社会勉強のために見てもいいかな、くらい

上から目線だった。

 

けど、そうやって偉ぶったとして

現物を知らずには語れないと思う。

アニメ全26話を見て、

その上で「所詮漫画」としたり顔で言おう。

そんな邪な気持ちでアニメを見始めた。

 

こんなアンチ目線の私には、5話あたり早々に壁が立ちふさがった。

主人公の炭治郎、そんなに簡単に強くなっちゃって。

あっさり試験合格しちゃって。

応援する隙がないじゃん。わたし、置いてきぼりじゃん。

 

私は、全話見終わってる友人に相談した。

「話がサクサクすぎる。

 世の人たちはこれで面白いって言ってるの?

 私の感性がおかしいの?」

 

友人は「ネタばれしていいか?」と脅してきた。

・・なんか悔しい。

そういうの、負けた気がするじゃん。

 

私は渋々アニメに復帰した。

 

何がダメってね、たぶん主人公の炭治郎がダメだ。

とてつもない純粋さで、紛れもない正義を押し通す。

私は捻くれていて、炭治郎の正義を受け止められないのだと思う。

 

自分を騙し騙しアニメを進め、なんとか16話

まだストーリーに乗り切れない。

もう折り返しもとうに過ぎてるのに。たすけて。

 

コミックス・アニメ・映画を制覇している妹に連絡した。

「気持ちが入らない・・」

もはや脱落寸前だった。

 

妹は私のアニメ進捗を聞いて

「蜘蛛の鬼を倒すまでは、頑張れ!」と言った。

なんだか私が鬼討伐してるみたいに励まされました。

妹よ、ありがとう。

そしてまた私は戦線復帰し、蜘蛛の鬼と対峙した。

 

 

人を殺したことは許されない、でも。

鬼もかつては人間だった。

すべての人間が持つ負の感情を、

選ぶことすら許されない過酷な境遇を、

誰が責めることができるだろうか。

  

そして、鬼を討つ者もまた

人を守る揺るぎない信念の裏側に、

哀しみや葛藤を抱えている。

 

彼らの心の在り様を見たときに、

読者はその世界の住人となれるのだと思う。

 

・・

・・・

蜘蛛の鬼から、アニメ最終話まで一気に見てしまった。

そしてその勢いのまま、映画も見てしまった。

 

ねぇ?

誰が想像できたかしら。

 

号泣で。

煉獄さぁぁぁん!!(※登場人物です)

って叫び出しそうになるのを堪えるのに必死で。

映画終わったあと、椅子から立ち上がれなかった。

 

私は、完全に打ちのめされてしまった。

 

映画の主題歌を聞くと、勝手に涙が出てしまう。

朝目を覚ますと、あぁ・・煉獄さんはもういないんだと思ってしまう。

現実世界と鬼滅世界が、完全に交錯した。

 

あんなに炭治郎のことを、共感ゼロの主人公だとか言っていたのに。

己の弱さや不甲斐なさに打ちのめされた、

その感情はまさしく炭治郎のものだったと思う。

共感というステップを端折って、直接私の心に乗り移ってきた。

なんなの、炭治郎、急に。こわい。

 

そんな炭治郎に憑依されて過ごした日々は

1ヵ月ほど続きました。長かった・・

 

私の動機は回収できたのだろうか。

鬼滅の刃の人気の理由を知りたい」

もう振り返るのも怖い。また炭治郎に乗り移られるんじゃないかと・・怯

でもきっとこの感情の揺さぶりのことを、

世の中では「感動」と呼ぶのかもしれない。

社会現象と評される規模の感動。 

 

冬休みにコミックス全巻読み終えて、

ようやく心の炭治郎を完全に除霊できた気がします。

しかし今でも後遺症は残っていて

煉獄さんのイラストや動画を見たりすると

ドキドキしてしまう。

あぁ、恋かしら

 

ってなわけもなく、

お年柄、たぶん

動悸 だと思う、うん。