どんぐり商店

くだらないはなし

落し物

会社の廊下に千円札が落ちています。
さて、あなたならどうしますか?

落ちてたんですよ、千円札が。

私に気づいて!と
訴えているかのように堂々と、廊下の真ん中で。
四つ折りになってるのは、実はちょっとシャイなのかもしれない。

とにもかくにも運命の出会いを果たした私は
その千円札を拾いました。

で。
即座にキョロキョロしてみた。
いや、違いますよ、誰も見てなかったらもらっちゃおうとか
そういうんじゃないですよ。
誰か、慌ててる人いるんじゃないかっと思って。

すると、ガラス張りの喫煙ルームにいるおじさんと目が合った。

おじさんは無表情、無言のままで
給湯室を指差した。

給湯室を覗くと若い男性が一人。

「あのー、もしかして千円、落としていませんか?」
慌ててポケットをさぐる男性。
そしてあ!っという顔をして
「すみません、ありがとうございます!」
と千円を持っていった。


一見イイ話、なんだけど、
なんだけどさーーー。

・おじさんは若い男性がお金を落としたのに気づいていながら
 声をかけなかった。見て見ぬふりをするってどういうこと?
・そして千円は本当に若い男性のものだったのか?
・もしかしてネコババ現場を押さえるためのトラップだったのでは?
・ってことはおじさんと若い男性はグルだった?
・いや違う。若い男性に声をかけるチャンスをおじさんがくれたのかも!

席に戻って周囲の人に、
「今こんなことがあってね」と話したら
「千円拾い損ねたね」とのコメントをいただいた。

たった1枚の千円札だけど、
ドラマがありますな。(ないってば。)