どんぐり商店

くだらないはなし

お局になった日

室長が激烈に推している中華料理屋がある。
特にオススメはチャーハン。
これまで経験したことのないコクがあり、
えも言われぬ味の深みがあるそうだ。

作りかたにポイントがあるらしい。

<作りかた>
①あまったチャーハンを缶にためておく。
②次にチャーハンを作るときに、①の缶からチャーハンを取り出す。
③新しいごはんと一緒に②を炒める。
④皿に盛る。中華鍋に残ったチャーハンは①に戻る。

なるほど。
何度もループすることで、ウナギのタレのように
味を重ねて深みを増していくのですな~。

って!待って!
チャーハン使いまわしとかあり得ない!!!
絶対室長の見間違いだってば~(笑

・・ということで、課メンバー全員でその中華料理屋に行ってきました。

注文したのは、
・ラーメン3種類 ×2
・酢豚
・蟹玉
・餃子 ×5

そして、
・チャーハン ×3

課メンバー7人が厨房を見守る中、おもむろに調理が始まる。

厨房のおじさんが中華鍋を振り、お玉で鍋の中を混ぜている。
その中身は紛れもなく・・
私たち「あれ、チャーハンだよね」(コソコソ)
ちょっと量が多い以外はいたって普通に見える。

と、そこへ
お店の人「はい、餃子お待たせ~」
餃子きたっ。
わぁい!おなかすいてたんだ。食べよう食べよう!

っと、ほんの少し目を離した隙に
アシちゃん「あれっ・・チャーハンどこ?!」
厨房を振り返ると、大量チャーハンが消えていた。
盛り付けた気配もない、他のお客さんに出してる気配もない。
厨房のおじさんはもう酢豚を作り始めていた。

ん~~~???
見間違いだったのか?
まぁいいや、餃子食べよう!

注文した料理がどんどん出てきてテーブルの上はお皿でいっぱいだ。
もう普通の部署の飲み会みたいになってきて、
これおいしいねーだとか
ビールもっと飲む?だとか
ラー油取って~とかとかとか・・しているうちに

お店の人「はいっチャーハンおまたせ~」
私たち 「!!!」

チャーハン作るところを見損ねてしまった。

なにはともあれ、噂のチャーハンのお味は・・
「おいしい!」
確かに、今まで食べたことのあるチャーハンよりもおいしい気がする。
全然油っぽくなくて、それでいてパラリとしていて、
味は濃くはないのだけど、なんだか奥行きがあるようで・・
室長「そう、これが古いチャーハンが絶妙にミックスされた味なのだよ!」

やはり信じられない。
再び厨房を監視。
ちょうど他のお客さんからチャーハンの注文が入った。
全員で凝視。

厨房のおじさんは、中華鍋を温めて油を入れたりネギを入れたり
キビキビとした動作で調理を続けている。
そしてそのキビキビした一連の動きで
調理台の下からお玉で何かをすくいあげた。
お玉に山盛りの食材は、

出たー!チャーハン!!

慣れた手つきで中華鍋に投入。
鍋が振られる度に、ごはん粒たちがジャンプしている。
チャーハンだ、、チャーハンだよね、、、

そして完成。お皿に盛り付け、
「チャーハンできたよ~」
とホール担当の女性を呼ぶ。

そして中華鍋を傾け、調理台の下、先ほどチャーハンを取り出した辺りへ
ザッザッザッ
と残りのチャーハンを移していた。

「見た?」
7人で顔を見合わせる。

”どこからともなくチャーハンが現れた”
”残ったチャーハンをためている”
この2つの現象をつなげるのは、
「古いチャーハンを使いまわしている」
しか、考えられない。

室長の話だと、チャーハン貯蔵は一斗缶を使っているらしい。
一斗缶は上から見ると四角。
角があります。
従って、角にチャーハンが入り込みます。
それに対し、お玉は丸。
角にはまったチャーハンをすくうことはできないでしょう。

イケオタ「缶の角にお局チャーハンがいる!」
チャーハンにも新人とお局がいるはずだと。
いつの時代からいるか分からないお局チャーハン・・
室長「僕が子供の時からあの作り方だね(自信満々)」
まさかね・・・数十年前のお局とか・・まさかね・・

しかし、出来上がったチャーハンはおいしかったのですわ。
新人と中堅とお局のミックスが
絶妙なチャーハンを作り出すってことだ。
つまりはお局あってのチャーハン。

私もお局と思われようがいい味を出していきたいな
と思った水曜20時半でした。