どんぐり商店

くだらないはなし

それでも私はやっていない

小さな足音が、走って近づいてくる。奇声をあげている。
姿はまだ見えない、でも私は足をとめた。

夏休み、暑い午後の100円ショップ。
子供もたくさんいる。
ここは大人として危険予測。
立ち止まって、走ってくる子供をやり過ごそう。

しかし。私のいる通路を通り過ぎる、という私の予測に反して
足音の主は、陳列棚の角を曲がってこちらへやってきた。

「あぶない!」と私が言うのと、
子供が私の足にぶつかるのはほぼ同時だった。
私の足にふわりとやわらかい感触がして、
不思議なくらい簡単に子供は転んでしまった。

見ればまだ幼稚園も行ってないくらいじゃないだろうか?
2、3歳の女の子が床に手をついて、こっちをじっとみている。

「だいじょうぶ?」
言ったあと、つい
「おみせのなかではしったら、あぶないよ?」
と言いそうになったけど、やめておいた。

女の子はこっちを見たままじっと動かない。

私も、もしかしたらがんばったら避けれたかもしれない。
一言謝っておこうかな。
「ごめんね。だいじょうぶ?」
かがんで目線を近くした瞬間!

「ギャアアアアア!!!!!マーーーマーーー!!!」

女の子の目から涙がぼろぼろとこぼれ落ち、
顔を真っ赤にして叫び出した。

振り返る他のお客さんたち。
えええ???
ちょっと何この状況!
いや違うんですって!加害とか誘拐とかじゃなくってね!
って、言い訳するのもおかしいし・・。

女の子を抱き起そうにも
触ったら噛みつかれそうな勢いで泣いてるし。
困った・・。
早く母親来ーい!

少しして現れたのは若い父親。
一緒にいたもう一人の子供に「ママは?どこ?」と聞いている。
ちょっと!父親も母親もいるのに、こんな小さい子供を野放しにしてるの?
どっちかがちゃんと見ておいてよ!
・・と、一言物申したかったが、
不審そうに私を見る父親の目に負けて何も言えなかった。

「走ってきた彼女とぶつかってしまって・・すみません。」
とだけ言って、逃げるようにその場を離れた。

これは冤罪だ・・。

 

※お断り※
どっちかっていうと子供は好きです。